中国EVのメーカー別ランキングを見た後に残る問いは、「2025年に中国で実際に売れた車種は何か」です。BYD(比亜迪)の強さだけでは、市場の重心は見えません。
2025年の中国NEV乗用車市場(小売1,245万台)は、上位10車種だけで**316.9万台、全体の25.5%**を占めました。ただし1位の吉利銀河・星願でもシェアは3.7%です。BYDはTop10に5車種を入れましたが、小米SU7、Tesla Model Y、五菱宏光MINIEVも上位に残りました。
中国EVは「低価格車だけの市場」ではなく、3万元台(約84万円〜)の小型車、10万元前後(約234万円)の量販車、20万元超(約467万円〜)の高価格車が同時に伸びる市場です。
この記事では、易車(Yiche)の2025年中国新エネルギー車ランキングTop100を使い、売れた車種と価格帯を整理します。対象はBEV、PHEV、EREV(レンジエクステンダーEV)を含む乗用車の小売販売です。出典は中国一次ソース(乗聯会、中汽協、電動汽車観察家、太平洋汽車、新浪財経など)に限定しています。
目次
本記事で扱う用語の整理(NEV、BEV、PHEV、EREV)
日本ではまだ馴染みが薄い略語が混ざるので、最初に整理します。中国の政策上の上位カテゴリ「NEV」の下に、BEV・PHEV・EREVの3種類がぶら下がる構造です。
「中国はBEV一辺倒」というイメージとは違い、市場の3割以上はPHEVとEREVが占めています。本記事ではこの3種類すべてを「中国EV」「中国NEV」として扱います。
また、価格はすべて元(人民元、CNY)表記です。2026年5月時点の為替で1元≒23.35円。本文中、特徴的な価格帯は1万円単位で日本円換算を添えています。
2025年の中国EV市場で何が起きたか
2025年は、BYDの世界首位、NEV比率の過半数到達、小米の急伸、鴻蒙智行の高級帯攻略、輸出倍増の5つが同時に進んだ年でした。
BYDが純電動でも世界首位に
通年販売460.2万台(前年比+7.8%)で中国NEV市場首位を4年連続キープ。BEV単独でも225.6万台を販売し、テスラの世界販売163.6万台を上回って、暦年で初めてBEV世界販売首位に。同年12月に累計NEV生産1,500万台達成(中国メーカー初)。
新車販売の半分以上がNEVに
中汽協ベースで中国NEV総販売1,649万台、国内1,387.5万台(前年比+19.8%)。NEV比率は50.8%で暦年初の過半数超え。乗聯会(CPCA)秘書長・崔東樹氏によれば世界NEV乗用車の68.4%が中国市場、世界NEV増分への中国寄与度68%。
小米SU7・YU7が高価格帯を奪取
スマートフォン大手の小米汽車が通年41.18万台(前年比+200%)でTop10入り。SU7は通年25.8万台で「20万元超(約467万円超)セダン年間販売1位」。6月発売のSUV版YU7は6カ月連続で中大型SUV月販1位。
鴻蒙智行が御三家の牙城を削る
Huaweiと賽力斯連合の問界(AITO)ブランドが通年42.29万台で新勢力首位。M7(30万元級・約700万円級)、M8(40万元級・約934万円級)、M9(50万元級・約1,168万円級)がそれぞれの価格帯で販売首位。M9は20カ月連続で50万元級超豪華SUV1位。
中国NEV輸出が343万台に倍増
崔東樹氏集計で輸出343万台(前年比+70%)、12月単月42万台(前年同月比+174%)。輸出先は欧州・東南アジア・中東・南米へ分散。BYD単体でも海外輸出100万台超(前年41万台)で、国内成長鈍化を海外が補う構図に。
あわせて押さえておきたい動き — 奇瑞が2027年に日本市場へ
中国乗用車輸出首位の奇瑞汽車は、2026年5月にシンガポールで合弁会社を設立しました。参画は奇瑞・江蘇悦達集団・国軒高科(電池)・日本のオートバックスセブン・アネスト岩田。2027年から日本市場に純電動車を投入する計画です。BYDに続く中国NEVメーカー2社目の本格日本上陸として、中国側報道でも注目されています。
出典 — 太平洋汽車「比亜迪2025年12月販売」2026年1月、電動汽車観察家「2025年新能源汽車販売」2026年1月16日、新浪財経「小米汽車2025年販売」2026年1月15日、新浪財経「鴻蒙智行2025年交付」2026年1月5日、新浪財経「中国NEV輸出」2026年1月26日、新浪財経「奇瑞日本市場参入計画」2026年5月11日、観察者網「奇瑞日本市場参入計画」2026年5月11日。
中国NEV市場の母数はいくらか(2025年)
2025年通年の中国NEV乗用車小売販売は1,245万台。Top100で全体の82%を占め、残り18%は年間4万台以下のロングテールです。
乗聯会(CPCA)2026年1月発表(BEV 788万+PHEV 340万+EREV 117万)、易車2025年新エネルギー車販売ランキング。
中国EV車種Top10はどの価格帯で売れたか(2025年)
価格帯は約80万円の軽自動車から約730万円の中型SUVまで、3万元台・10万元台・20万元超の3層が同時に売れているのがTop10の特徴です。低価格1色でも高級1色でもありません。
具体的に見ると、1位は吉利銀河の星願(6.88-8.78万元/約161-205万円)で46.6万台。2位は五菱の宏光MINIEV(3.58-5.58万元/約84-130万円、Top10最安)、3位はTesla Model Y(26.35-31.35万元/約615-732万円、Top10最高)。BYDは秦PLUS・海鴎・秦L・海豹06・宋PLUSの5車種を10〜20万元の量販価格帯に置いてTop10入り。小米SU7(21.99-30.39万元/約513-710万円)は初参入ブランドのセダンながらTesla Model 3より上位の7位に入りました。
易車2025年新エネルギー車販売ランキング(小売ベース)、母数1,245万台は乗聯会(CPCA)2026年1月発表。
(6.88-8.78万元)
(3.58-5.58万元)
(26.35-31.35万元)
(7.98-17.98万元)
(6.98-8.59万元)
(9.68-15.58万元)
(21.99-30.39万元)
(9.68-13.98万元)
(23.55-33.95万元)
(13.58-18.08万元)
Top10合計でも市場シェアは25.5%です。スマートフォン市場のように少数モデルが7割を占める構造ではありません。中国NEVは、車種単位ではかなり分散した市場。最安は宏光MINIEVの3.58万元(約84万円)、最高はModel Yの31.35万元(約732万円)。「安い車だけが売れる市場」ではなく、用途と価格帯ごとに勝ち筋が分かれています。
出典 — 易車2025年新エネルギー車販売ランキング、乗聯会(CPCA)2026年1月発表、汽車之家「2025年新エネルギー車型販売」2026年。
11位以下の車種から何が読めるか(2025年)
11位以下を見ると、BYDの量販系列、新興ブランドの高級SUV、EREVモデルが同時に伸びていることが分かります。
11位以下には、BYDの元シリーズ、宋シリーズ、XPeng MONA M03、Li Auto L6、長安Lumin、吉利Pandaなどが並びます。量販価格帯と新興プレミアムが混在しています。
20位から30位台には、問界M7、問界M8、問界M9、Zeekr 7X、Onvo L60などが入ります。多くは2024年から2025年に販売を伸ばしたブランドです。
中国EV専門メディアの電動汽車観察家は、2025年の主要メーカーを前年比成長率で3グループに分けて整理しています。
- 小米+388%
- XPeng+126%
- 長城+25%
- BYD+8%
- 広汽-3%
- Tesla-7%
- Li Auto-19%
この分類は車種ランキングともよく整合します。新興ブランドが価格帯を絞って急伸する一方、規模が大きい老舗ほど成長率は鈍化し、外資勢と一部の新興プレミアムが前年割れに転じた、というのが2025年の構図です。
出典 — 電動汽車観察家「2025年新能源汽車販売」2026年1月、易車2025年新エネルギー車販売ランキング。
メーカー別シェアで見る市場の構造(2025年)
母数1,245万台(乗聯会小売乗用車NEV)を、Top100集計メーカー8社+その他Top100+Top100圏外で分解すると、BYDが18車種・約289万台で圧倒的、続いて吉利銀河が8車種・約109万台。面積の大きさが販売台数の大きさです。
易車2025年新エネルギー車販売ランキングをメーカー別に当社が集計、母数1,245万台は乗聯会(CPCA)2026年1月発表。
中国EV車種ランキングTop100(2025年)
| 順位 | 車種 | メーカー | 種別 | セグメント | 販売台数 | 価格帯 |
|---|
易車2025年新エネルギー車販売ランキング(小売ベース)。価格帯は易車掲載値で単位は万元(1元≒23.35円・2026年5月時点)。
よくある質問
2025年の中国EV車種ランキング1位は何ですか?
吉利銀河の星願(Xingyuan)で年間46.6万台を販売しました。約161-205万円(6.88-8.78万元)のBEV小型車で、市場シェアは3.7%です。2位は五菱の宏光MINIEV、3位はTesla Model Yと続きます。
BYDが「世界首位」というのは何の数字ですか?
BYDのBEV(純電気自動車)単独で年間225.6万台販売し、テスラの世界販売163.6万台を上回ったことを指します。BYDの新能源車全体460.2万台とテスラを比較した数字ではありません。集計口径を取り違えると数字の意味が大きく変わります。
EREV(レンジエクステンダーEV)とPHEVは何が違いますか?
EREVはタイヤを動かすのが常にモーターで、エンジンは発電専用です。PHEVはエンジンが直接タイヤを駆動することもできます。中国では「増程式」と呼ばれ、Li Auto(理想汽車)が主力技術にしています。日産e-POWERと近い仕組みですが、EREVは外部充電もできる点が違います。
中国NEV市場の母数は1,245万台と1,649万台、どちらが正しいですか?
両方正しいですが集計口径が違います。乗聯会(CPCA)の1,245万台は「乗用車・国内・小売」、中汽協(CAAM)の1,649万台は「全車種(商用車含む)・卸売・輸出含む」です。本記事は車種別ランキングと整合させるため、乗聯会基準の1,245万台を母数として採用しています。
Top100に外資メーカーは何車種入っていますか?
5車種前後です。Tesla Model Y・Model 3、Volkswagen ID.3、Buick GL8 PHEV、日産N7、Toyota bZ3X 程度。中国メーカーが量販帯をほぼ押さえている構図です。
日本企業はどのモデルがランクインしていますか?
70位のトヨタbZ3X(広汽トヨタの中国専用EV、10.98-15.98万元/約256-373万円)が唯一の日系量販EVです。年間約7万台。日産N7も別途ランクインしていますが、日系の中では bZ3X が量販ゾーンに食い込んだ唯一のモデルです。
中国EV車種ランキングから何を見るべきか
日本企業が見るべき点は、BYDの強さだけではありません。価格帯、動力方式、販売網、ブランドの作り方まで含めて、次の5つを押さえると市場の輪郭が見えてきます。
BYDの面展開はTop100の18車種に及ぶ
Top100にBYD系は18車種入りました。秦、宋、海鴎、海豹、元、漢、唐の各系列で販売を積み上げています。一車種が当たれば「シリーズ全体に広げて、複数価格帯で量を取る」という戦い方です。
PHEVとEREVが、合わせて全体の37%
2025年の小売販売はBEV 788万台、PHEV 340万台、EREV 117万台。PHEVとEREVの合計457万台は、全NEVの37%を占めます。中国では内燃機関を残す電動車も主力です。
価格帯は二極化している
3万元台(約84万円〜)の宏光MINIEVと、50万元級(約1,168万円級)の問界M9が、同じランキングに入ります。低価格だけでなく、高級帯でも中国メーカーが戦っています。
外資勢はTop100で5車種前後
Top100で目立つ外資系はTesla、大衆ID.3、Buick GL8 PHEV、日産N7、Toyota bZ3X程度。中国メーカーが量販帯をほぼ押さえている構図です。
トヨタbZ3Xが70位に食い込んだ
広汽トヨタの中国専用EV「bZ3X」は70位、10.98-15.98万元(約256-373万円)の量販価格で年間7万台。日系で唯一、中国NEV量販ゾーンに食い込んだモデルです。
2025年の中国EVは、Tesla対BYDだけでは説明できません。 BYDが強い前提の上で、小米、鴻蒙智行、XPeng、Li Auto、Leapmotor、Zeekrが、用途別・価格帯別に伸びています。
中国市場を日本事業に引き付けて見るなら、2027年の奇瑞日本投入も重要です。Top100で中国メーカーの量販設計を把握しておくと、日本市場への波及を読みやすくなります。
データソースについて
データ取得日: 2026年5月13日 / 次回更新予定: 2026年11月(半期ごと)
本記事の車種別Top100は、易車(Yiche)が公開している2025年新エネルギー車販売ランキングのデータです。対象は2025年通年・中国全国・新エネルギー車・小売ベース。2026年5月13日時点のデータを使っています。
市場全体の母数は、乗聯会(CPCA)の2025年NEV乗用車小売販売1,245万台を採用しました。中汽協の総販売1,649万台とは、対象範囲と集計口径が異なります(中汽協は商用車・輸出を含む卸売ベース、乗聯会は乗用車・国内小売ベース)。
BYDとTeslaの世界首位比較は、BYDのBEV 225.6万台とTeslaの世界販売163.6万台の比較です。BYDの新エネルギー車全体460.2万台をTeslaと比べた表現ではありません。
価格の日本円換算は、2026年5月時点の為替レート(1元≒23.35円)で算出し、10万円単位で丸めています。
画像出典
画像出典
1位 星願: 吉利銀河公式(galaxy.geely.com)からの記事内引用
2位 宏光MINIEV: Wikimedia Commons.jpg)(CC BY-SA 4.0)
3位 Model Y: Wikimedia Commons / LuvsMG481(CC BY-SA 4.0)
7位 小米SU7: Wikimedia CommonsPrivate_Xiaomi_SU7%E6%B2%AAA7WE106_2024-11-24.jpg) / S5A-0043(CC BY 4.0)
9位 Model 3: Wikimedia Commons / Chanokchon(CC BY-SA 4.0)
出典一覧
易車 — 2025年新エネルギー車販売ランキング、2026年5月13日時点のデータ参照
乗聯会(CPCA)公式 — 2025年中国NEV乗用車小売販売(母数1,245万台、BEV 788万・PHEV 340万・EREV 117万)、2026年1月発表
CnEVPost「China NEV sales total 16.49 million in 2025」2026年1月14日
電動汽車観察家「2025年新能源汽車販売」2026年1月16日
太平洋汽車「比亜迪2025年12月販売」2026年1月
新浪財経「小米汽車2025年販売」2026年1月15日
新浪財経「鴻蒙智行2025年交付」2026年1月5日
新浪財経「中国NEV輸出」2026年1月26日
汽車之家「2025年新エネルギー車型販売」2026年
新浪財経「奇瑞日本市場参入計画」2026年5月11日
観察者網「奇瑞日本市場参入計画」2026年5月11日


