中東情勢が不安定になると、原油価格やLNG価格のニュースが増えます。すると、化石燃料に頼りすぎることのリスクが、改めて意識されます。

ただし、これはガソリン代や電気代だけの話ではありません。石油は燃料だけでなく、樹脂、繊維、合成ゴム、印刷インキ、包装材にも入っています。天然ガスは発電や都市ガスだけでなく、アンモニアを通じて肥料にもつながります。石炭は発電だけでなく、鉄鋼やセメントにも使われています。

化石燃料の供給が揺れると、影響は素材、物流、農業、建設、製造業のコストにも広がります。だからこそ、化石燃料への依存を下げる技術には、今後も投資と調査需要が集まりやすいはずです。

この記事では、まず石油・天然ガス・石炭のサプライチェーンを整理します。そのうえで、どの用途がどの燃料に依存しているのか、どこに代替技術が入りやすいのかを見ていきます。最後に、今後ブログで深掘りしたい技術領域を12テーマにまとめます。

石油・天然ガス・石炭はどこで使われているのか

化石燃料は大きく分けると、石油・天然ガス・石炭の3種類です。同じ化石燃料でも、下流で担っている役割はかなり違います。

化石燃料サプライチェーン全体図

化石燃料サプライチェーン全体図。石油・天然ガス・石炭が、発電・燃料・素材へ広がる全体像

図の構造(テキスト版)

  • 入口は3系統 — 石油(原油)、天然ガス、石炭。
  • 石油の出口は、ナフサ、ガソリン、軽油、ジェット燃料、重油、LPG。ナフサだけが化学原料、それ以外は燃料。
  • 天然ガスの出口は、発電用LNG、都市ガス、エタン、LPG・プロパン、アンモニア合成原料。
  • 石炭の出口は、発電用石炭、コークス(鉄鋼還元用)、セメント焼成燃料、合成ガス/メタノール(中国のCTO・MTO経由)。
  • 基礎化学品は、エチレン・プロピレン・ブタジエン・芳香族(BTX)の4種類。エチレンとプロピレンはナフサ・エタン・MTOの3経路から作れるが、ブタジエンと芳香族はほぼナフサクラッカー由来。
  • 最終用途は、樹脂(PE・PVC・PP)、合成ゴム(タイヤ)、PET(飲料容器・繊維)、ナイロン、印刷インキ、肥料、電力・熱、鉄鋼、セメント。

この全体図は、石油・天然ガス・石炭がそれぞれ別の入口から入り、発電、燃料、素材、肥料、鉄鋼、セメントへ広がっていく様子を可視化したものです。

燃料主な入口主な出口
石油原油、製油所、ナフサ自動車燃料、航空燃料、石油化学品、潤滑油、LPG
天然ガスガス田、LNG、都市ガス発電、暖房、都市ガス、アンモニア、エタン由来エチレン
石炭炭鉱、バルク輸送発電、鉄鋼還元、セメント焼成、中国のCTO・MTO

石油ルートは、原油生産から始まり、タンカーやパイプラインで輸送され、製油所で精製されます。そこでガソリン、軽油、ジェット燃料、重油、ナフサ、潤滑油などに分かれます。ナフサはさらにナフサクラッカーで分解され、エチレン、プロピレン、ブタジエン、芳香族といった基礎化学品になります。

天然ガスルートは、ガス田生産からLNGタンカーまたはパイプラインで輸送され、発電用LNG火力、家庭・業務用の都市ガス、CNG車用燃料、アンモニア合成、エタン分離からのエチレン製造に分かれます。

石炭ルートは、採掘からバルク船や鉄道で輸送され、石炭火力発電、コークス炉から高炉での鉄鋼還元、セメントキルンでの焼成に使われます。中国では、石炭からメタノールを経てオレフィンをつくるCTO・MTOも使われています。

CTOはCoal to Olefinsの略で、石炭からエチレンやプロピレンなどのオレフィンをつくるルートです。石炭がそのままメタノールになるわけではありません。まず石炭をガス化して、一酸化炭素と水素を主成分とする合成ガスをつくります。次に、その合成ガスからメタノールを合成します。

MTOはMethanol to Olefinsの略で、メタノールをエチレンやプロピレンに変換する工程を指します。つまりCTOは「石炭からオレフィンまでの大きなルート」、MTOはその中核にある「メタノールからオレフィンへの変換工程」と見ると理解しやすいです。

化学品まで見ると、石油依存が見えてくる

石油化学まで見た化石燃料サプライチェーン詳細図

化石燃料サプライチェーン詳細図。ナフサ、エタン、天然ガス、石炭由来ルートの違いと下流出口を整理

図の構造(テキスト版)

  • 詰まりやすい場所(チョークポイント、図中の赤枠)は2つ — ブタジエンと芳香族(BTX)。どちらもナフサクラッカー依存が大きい。
  • ブタジエンの下流 — 合成ゴム(SBR・BR)・ABS樹脂 → タイヤ・履物・家電筐体。
  • 芳香族の下流 — スチレン系・PET・ナイロン原料 → 衣料・包装・塗料・接着剤・印刷インキ。
  • エチレンとプロピレンは複数経路あり、相対的に詰まりにくい。
    • エチレン ← ナフサクラッカー(石油) / エタンクラッカー(天然ガス) / MTO(石炭→メタノール)
    • プロピレン ← ナフサクラッカー / NGL・LPG由来 / MTO
  • エチレン下流:PE・PVC・EG → フィルム・容器・パイプ・繊維。
  • プロピレン下流:PP・アクリル → 自動車部品・食器・繊維。
  • 天然ガス → アンモニア → 肥料。発電用LNGと石炭火力 → 電力・熱。コークス → 鉄鋼。セメント燃料 → セメント。

この詳細図は、全体図よりも少し見やすく整理したものです。特に、ナフサクラッカー、エタンクラッカー、天然ガスの出口、石炭由来ルートの違いを追うために使います。

詳細図で注目したいのは、基礎化学品の出方です。

ナフサクラッカーは、エチレン、プロピレン、ブタジエン、芳香族をまとめて出す総合化学品工場です。一方、エタンクラッカーはほぼエチレン中心です。中国のCTO・MTOも、主にエチレンとプロピレンをつくるルートです。

つまり、エチレンはナフサ、エタン、CTO・MTOの複数経路から作れます。一方で、ブタジエンと芳香族は石油チェーンへの依存が大きい領域です。ブタジエンは主にナフサクラッカーの副産物です。

なお、この詳細図では見やすさを優先して主要ルートだけを描いています。芳香族はナフサクラッカー由来だけでなく、製油所の接触改質装置からも供給されます。図にない補足ルートまで含めると、芳香族は「石油精製と石油化学の両方にまたがる基礎化学品」と捉えるほうが正確です。

この違いが、素材分野の脱化石燃料を考えるときの出発点になります。

基礎化学品石油系原料(主な取り方)天然ガス系原料(主な取り方)石炭系原料(主な取り方)主な用途
エチレン○ ナフサクラッカー○ エタンクラッカー△ メタノール経由のMTOPE、塩ビ、エチレングリコール
プロピレン○ ナフサクラッカー、製油所系△ NGL・LPG由来△ メタノール経由のMTOPP、アクリル、プロピレンオキサイド
ブタジエン○ ナフサクラッカー副産物× 主要ルートではない× 主要ルートではない合成ゴム、ABS
芳香族○ 改質油、ナフサクラッカー副産物× 主要ルートではない× 主要ルートではないPET、ナイロン、スチロール、インキ、ウレタン

「樹脂」と一括りにすると見えませんが、ポリエチレンとタイヤ用合成ゴム、PET、ナイロン、印刷インキでは、依存している原料が違います。

表中の○は代表的な商業ルート、△は地域や設備によって使われるルート、×は主要ルートとしては一般的ではないものを示します。CTO・MTOは中国で重要な石炭化学ルートですが、基本的にはエチレンとプロピレンを補うルートであり、ブタジエンや芳香族を広く代替するルートではありません。

ナフサ不足で止まるもの ── 印刷インキ・タイヤ・PETボトル・ナイロン

原油1バレルから出る留分の比率は、原油種や精製装置によって変動します。ただし、ガソリン、軽油、灯油・ジェット燃料、重油・残油、ナフサなどが同時に出る連産品である点は変わりません。製油所は運転条件である程度の調整はできますが、特定の留分だけを自由に増やせるわけではありません。

原油供給が揺れると、ガソリン、軽油、ジェット燃料のような燃料用途がまず注目されます。一方で、ナフサは化学原料です。ナフサが不足すると、基礎化学品の供給に影響し、そこから樹脂、繊維、合成ゴム、インキ、塗料、包装材に波及します。

特にブタジエンと芳香族は、需要に合わせて簡単に増産しにくい領域です。ブタジエンはタイヤ用合成ゴムやABS樹脂につながります。芳香族はPET、ポリエステル繊維、ナイロン、発泡スチロール、印刷インキ、ウレタン、ポリカーボネートにつながります。

このため、原油やナフサの供給不安は、燃料価格だけでなく、身の回りの素材価格にも影響します。中東情勢やホルムズ海峡のリスクが、化学品・素材の調達リスクとして見られる理由はここにあります。

用途別に見る化石燃料の役割

3つの化石燃料がどの用途で使われているかを整理すると、次のようになります。

○=主力、△=一部・補助、×=ほぼ使われない

用途石油天然ガス石炭見方
発電△ 重油○ LNG火力○ 石炭火力長期的には代替可能ですが、設備は燃料別に専用化されます
自動車燃料○ ガソリン・軽油△ CNG・LNG車×電動化が主な代替方向
航空燃料○ ジェット燃料××液体燃料への依存が強い
暖房・家庭用△ 灯油○ 都市ガス×ヒートポンプ化・断熱が効く
鉄鋼還元×△ DRIで一部○ コークス水素還元・電炉化が焦点
セメント焼成△ 石油コークス等△ 一部燃料○ 主燃料代替燃料・低クリンカー・CCUSが焦点
エチレン原料○ ナフサ△ エタン△ CTO・MTO地域により原料が違う
肥料・窒素源×○ アンモニア×天然ガス由来アンモニアへの依存が大きい

ここで大事なのは、「代替候補がある」と「すぐ置き換えられる」は違うということです。

発電は、LNG火力、石炭火力、石油火力、再エネ、原子力など複数の選択肢があります。ただし発電所は燃料ごとに設備が違うため、原油価格が上がったから明日からLNGに切り替える、という動きは簡単ではありません。長期の設備投資と燃料契約の問題です。

LNG価格については、かつて日本向け長期契約でJCCリンクが広く使われてきました。現在はHenry Hub、JKM、ハイブリッド型など価格指標の多様化が進んでいますが、JOGMECの2026年2月公表調査では、日本企業の定期LNG契約におけるJCC・Brent等の原油価格系指標は2024年度時点で70%とされています。したがって、原油価格がLNG価格や電力コストに影響する経路は残っています。ただし、すべてのLNG価格が単純に原油連動で決まるわけではありません。

一方、航空燃料、鉄鋼還元、セメント焼成、窒素肥料は、代替が進みにくい領域です。技術開発は進んでいますが、コスト、設備、品質、供給量の制約が大きく、短期で置き換えるのは難しい用途です。

基礎化学品から最終製品へ

基礎化学品がどの最終製品につながるかを整理すると、石油化学の広がりが見えます。

基礎化学品代表的な最終製品
エチレンポリエチレン(PE)、塩化ビニル(PVC)、エチレングリコール、酢酸ビニル
プロピレンポリプロピレン(PP)、アクリル繊維、プロピレンオキサイド
ブタジエン合成ゴム(SBR・BR、タイヤ用)、ABS樹脂(家電筐体)
ベンゼンスチレン(発泡スチロール・ABS)、ナイロン原料、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂
トルエン印刷インキ溶剤、TDI(ウレタン)、香料
キシレンPTAからPET(ペットボトル・ポリエステル繊維)、可塑剤

印刷インキの中身を分解すると、溶剤、樹脂、有機顔料、添加剤など、石油化学品が多く使われています。タイヤは合成ゴム(SBR・BR)が主成分で、ブタジエン依存が大きい製品です。PETボトルやポリエステル衣料はキシレン由来のPTA、発泡スチロールやABS樹脂はベンゼン由来のスチレンにつながります。

このように見ると、脱化石燃料は「燃料を替える」だけではなく、「素材の原料をどう替えるか」「既存素材をどう循環させるか」という話にもなります。

脱化石燃料の手段は3つ

脱化石燃料の技術は数が多く、並べるだけでは見通しが悪くなります。実務上は、次の3つに分けると整理しやすくなります。

手段内容
代替化石燃料を別のエネルギー・素材に置き換えるEV、SAF、水素還元製鉄、ヒートポンプ、バイオプラスチック
リサイクル既に作った素材を回収し、新規投入を減らすマテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、スクラップ電炉
削減そもそも必要量を減らす軽量化、断熱、省エネ、長寿命化、共同配送、簡素包装

燃料として燃やしたものは、基本的にリサイクルできません。航空燃料や軽油は、燃やした後に原料として戻せないため、代替と削減が中心になります。

一方、樹脂、繊維、金属のように形として残るものは、リサイクルの余地があります。ただし回収、選別、品質、コストの制約があるため、リサイクルだけで新規原料を完全に置き換えるのは簡単ではありません。

だから実際には、代替、リサイクル、削減を組み合わせます。たとえばタイヤなら、バイオ由来ブタジエンの開発、廃タイヤのリサイクル、長寿命化・軽量化を同時に見ます。航空なら、SAFの導入、機材更新、運航効率化を組み合わせます。

出口別の技術整理

化石燃料の出口ごとに、現実的な技術を整理すると次のようになります。

出口代替リサイクル削減現在の見方
自動車燃料EV、FCV、バイオ燃料、合成燃料バッテリー・材料回収軽量化、公共交通、共同利用EVは普及拡大。FCV・合成燃料は用途を選ぶ
航空燃料SAF(持続可能な航空燃料)、水素航空機、e-fuelなし機材更新、運航効率化、需要管理SAFは本命候補ですが、供給量と価格が課題です
発電再エネ、原子力、水素・アンモニア混焼なし省エネ、需要応答、蓄電再エネと蓄電は拡大。混焼は実証・初期導入段階
暖房・都市ガスヒートポンプ、バイオガス、合成メタンなし断熱、省エネ機器建物側の断熱と電化が効きやすい
鉄鋼水素還元製鉄、DRI+電炉スクラップ電炉軽量化、長寿命化スクラップ電炉は実用。水素還元は実証・大型投資段階
セメント代替燃料、低クリンカーセメント、CCUSコンクリート再利用構造最適化、長寿命化CO2と熱需要の両方があり、難易度が高い
窒素肥料グリーン/ブルーアンモニアなし精密農業、施肥量最適化、堆肥併用原料転換と使用量削減の両方が必要
エチレン系樹脂・繊維バイオプラ、紙・木材代替マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル軽量化、簡素包装商業品は増加。ただし廃プラ調達と品質が制約
芳香族・ブタジエン系素材バイオ芳香族、バイオブタジエン、水性・UV化ケミカルリサイクル、廃タイヤリサイクル長寿命化、薄膜化、使用量削減研究・実証が多く、短期は削減と循環が重要

この表で見たいのは、技術の優劣ではなく「どの出口で、どの手段が効きやすいか」です。

自動車や暖房は、電化による代替が比較的見えやすい領域です。航空、鉄鋼、セメント、肥料は、代替技術はあるものの、規模・コスト・品質の壁が大きい領域です。樹脂・繊維は、代替素材とリサイクルの両方が進みますが、用途ごとに要求性能が違うため、一本の技術で全体を置き換えることはできません。

代表技術と見るべきポイント

もう少し具体的に、代表技術と見るべきポイントを並べます。

領域代表技術見るべきポイント
EV・全固体電池電池、充電インフラ、次世代電池量産時期、材料、コスト、充電網、既存車との価格差
燃料電池FCV、商用車、定置用電源電池EVとの棲み分け、水素供給、補給時間、耐久性
SAF・合成燃料HEFA、ATJ、PtL、e-fuel原料制約、製造コスト、混合義務、航空会社の調達
水素グリーン水素、ブルー水素、液化水素、MCH製造コスト、輸送方法、需要先、インフラ
アンモニアグリーン/ブルーアンモニア、混焼、船舶燃料発電・肥料・船舶燃料のどこで需要が立つか
水素還元製鉄水素DRI、電炉、高炉水素吹込み水素コスト、鉄鉱石品質、既存高炉との置き換え方
セメント燃料転換・低炭素セメント代替燃料、低クリンカー、CCUS高温熱需要、プロセス由来CO2、建設規格
ケミカルリサイクル油化、ガス化、解重合廃プラ調達、選別、不純物、再生品の品質
バイオ化学品バイオナフサ、バイオブタジエン、バイオ芳香族原料作物、認証、既存設備で使えるか
ヒートポンプ・断熱空調、給湯、断熱材、窓電化、施工網、住宅規制、エネルギー価格

脱化石燃料で注目したい12の技術領域

ここまでのサプライチェーンを踏まえると、次に注目したい技術領域は次の12テーマに整理できます。

1. 全固体電池

EVの航続距離、充電時間、安全性を変える可能性がある次世代電池です。硫化物系・酸化物系・ポリマー系の違い、量産上の課題、既存リチウムイオン電池とのコスト差、車載以外の用途を調べる価値があります。

2. EV電池材料

正極材、負極材、電解液、セパレーター、リチウム、ニッケル、コバルト、黒鉛など、EV普及の裏側にある素材サプライチェーンです。中国依存、精製能力、リサイクルまで含めて見る必要があります。

3. 定置用蓄電池とVPP

再エネが増えるほど、電力をためる技術が重要になります。蓄電池、需給調整、仮想発電所(VPP)、送配電網の強化、データセンター電源まで広がる領域です。

4. 燃料電池

乗用車だけで見るとEVに押されていますが、商用車、バス、トラック、港湾、フォークリフト、非常用電源、分散電源ではまだ調べる価値があります。長距離、重荷重、短時間補給、連続稼働がキーワードです。

5. 水素製造・貯蔵・輸送

水素は、発電、鉄鋼、化学、船舶、長距離輸送の脱化石燃料で何度も出てくる基盤技術です。グリーン水素、ブルー水素、液化水素、MCH、アンモニア輸送、パイプライン、電解装置を分けて見る必要があります。

6. アンモニア

アンモニアは肥料の原料です。発電燃料や船舶燃料の候補でもあります。天然ガス由来のグレーアンモニア、再エネ水素由来のグリーンアンモニア、CCSを組み合わせたブルーアンモニアを分けて整理したいテーマです。

7. SAFと合成燃料

航空は電化が難しい領域です。そのため、SAF(持続可能な航空燃料)やe-fuelが注目されます。HEFA、ATJ、PtLなど製造ルートが複数あり、廃食油、バイオエタノール、CO2回収、水素、触媒技術まで関係します。

8. 水素還元製鉄と電炉

鉄鋼は石炭依存が強い産業です。水素還元製鉄、直接還元鉄(DRI)、電炉、スクラップ活用が論点になります。日本企業と欧州勢の比較もしやすい領域です。

9. セメント燃料転換と低炭素セメント

セメントは、脱化石燃料と脱炭素が重なる領域です。セメントキルンは高温熱を必要とし、石炭や石油コークスなどの化石燃料をどう減らすかが課題になります。一方で、石灰石を焼成する化学反応そのものからもCO2が出るため、代替燃料だけでは整理しきれません。低クリンカーセメント、混合材、CCUS、コンクリートリサイクルまで含めて見る必要があります。

10. ケミカルリサイクル

混合プラ、汚れたプラ、複合材に対して、油化、ガス化、解重合などのケミカルリサイクルが候補になります。廃プラ調達、選別、不純物処理、再生品の品質がボトルネックです。

11. バイオ化学品とバイオ由来素材

バイオナフサ、バイオエチレン、バイオブタジエン、バイオ芳香族、バイオマスプラスチックなどが対象になります。特にブタジエンや芳香族は、タイヤ、PET、ナイロン、スチロール、インキ、ウレタンにつながるため重要です。

12. ヒートポンプ・断熱・建物電化

暖房・給湯をガスや灯油から電気へ移すには、ヒートポンプ、断熱材、窓、空調制御が重要になります。住宅、建材、空調、設備工事まで広がるテーマです。

まとめ

脱化石燃料を考えるには、まず石油・天然ガス・石炭のサプライチェーンを見る必要があります。石油は燃料と化学品、天然ガスは発電・都市ガス・肥料、石炭は発電・鉄鋼・セメントを支えています。さらに化学品の中でも、エチレン系と芳香族・ブタジエン系では代替のしやすさが違います。

中東情勢や資源価格の不安定さは、化石燃料依存のリスクを見えやすくします。そのたびに、EV、燃料電池、全固体電池、水素、アンモニア、SAF、ケミカルリサイクル、バイオ化学品といった技術への関心は高まりやすくなります。

大きな「脱炭素」論として見るだけでは、企業が次に調べるべき技術領域は見えにくくなります。石油・天然ガス・石炭がどの用途に入っているのかを分解すると、注目すべき領域は、EV・電池、水素・アンモニア、SAF、鉄鋼・セメントの燃料転換、ケミカルリサイクル、バイオ化学品、建物電化へ整理できます。

主な確認資料